【建設業認可】
建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度について

建設業許可はかつて、譲渡や相続などを行った際、許可の承継ができず、新たに建設業許可を取りなおさなければならず、許可が下りるまでの間、許可に係る工事が請負えない空白期間が存在していました。
その不利益を改善するために設けられた認可制度が建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度です。

今回は、令和2年10 月1日施行の建設業法改正で新設された認可制度である建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度について解説していきます。
申請する場合の必要書類等についても記載していますので、是非参考にしていただければと思います。

1.建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度とは

建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度とは、令和2年10月1日施行の建設業法の改正で新設された認可制度です。
これにより、譲渡や相続などを新規申請せずにできるようになりました。
譲渡などを行う際は効力発生前(建設業法第十七条の二1~3号)に認可を受けること、相続の場合は死亡後30日以内(建設業法第十七条の三)に認可申請する必要があります。

上記のように、もらう側とあげる側の営業所の所在地によって申請先が変わります。
同じ場合は管轄の都道府県へ申請、違う場合や大臣許可の場合は地方整備局、都市整備局へ提出しましょう。

ちなみに、もらう側は、あげる側の現在の許可業種について、要件を満たしている必要があります。
特に、経験が必要な要件については注意しましょう。
○建設業許可の要件についてはこちら

2.建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度の種類

建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度(以下、認可制度)には、4種類の区分があります。
①事業譲渡
②法人の合併
③法人の分割
④個人の相続

認可制度は上記①~④いずれの場合でも、業種全部を引き継ぐ必要があります。
譲渡や相続などができない業種がある場合は、あらかじめ一部廃業しておく必要があります。

では、以上の4種類の区分について解説していきます。

 ①事業譲渡

現在行っている建設業について譲渡する場合に必要な申請です。
事業譲渡には、
個人→個人
個人→法人
法人→法人
法人→個人

の4種類あり、個人間、法人間だけでなく、法人と個人の間でも事業譲渡できます。

事業譲渡には、下記4つの要件があり、すべてを満たしている必要があります。
ア 譲渡人が建設業許可を受けていること
イ 譲受人が譲渡人の有する建設業の業種について一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと
ウ 譲渡人が譲受人に対し、建設業の全部について営業譲渡・事業譲渡を行うこと
エ 営業譲渡・事業譲渡の効果が発生していないこと

※「 譲受人が譲渡人の有する建設業の業種について一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと」とは、下記の表をご覧ください。

譲渡人譲受人認可の可否
塗装(一般)塗装(一般)
塗装(一般)塗装(特定)×
(どちらかを廃業しなければならない)

 ②法人の合併

次に、法人の合併について解説します。
建設業認可が必要な法人の合併には吸収合併と新設合併の2種類あります。
吸収合併→一方の法人を残し、消滅した方の法人の権利義務の全部を承継させる合併方法
新設合併→全ての法人を消滅させて合併により新設する会社に承継させる合併方法
以上のどちらかを行う場合、認可が必要です。
法人の合併については要件があります。

合併には、下記4つの要件があり、すべてを満たしている必要があります。
ア 合併消滅法人が建設業許可を受けていること
イ 合併存続法人が合併消滅法人の有する建設業の業種について、一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと
ウ 合併存続法人が建設業許可業者を合併すること
エ 合併の効果が発生していないこと

※「 合併存続法人が合併消滅法人の有する建設業の業種について一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと」とは、下記の表をご覧ください。

合併消滅法人合併存続法人認可の可否
塗装(一般)塗装(一般)
塗装(一般)塗装(特定)×
(どちらかを廃業しなければならない)

 ③法人の分割

法人の分割には吸収分割と新設分割があります。
吸収分割→会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の既存の会社に承継させる分割方法
新設分割→会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後新設した会社に承継させる分割方法

分割には、下記4つの要件があり、すべてを満たしている必要があります。
ア  分割被承継法人が建設業許可を受けていること
イ  分割承継法人が分割被承継法人の有する建設業の業種について、一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと
ウ  分割承継法人が分割被承継法人の建設業許可を承継すること
エ  分割の効果が発生していないこと

※「イ  分割承継法人が分割被承継法人の有する建設業の業種について、一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと」とは、下記の表をご覧ください。

分割被承継法人分割承継法人認可の可否
塗装(一般)塗装(一般)
塗装(一般)塗装(特定)×
(どちらかを廃業しなければならない)

 ④個人の相続

個人事業主で建設業を営んでいる場合は、その事業主が亡くなった場合、相続の認可が必要です。

相続には、下記4つの要件があり、すべてを満たしている必要があります。
ア  被相続人が建設業許可を受けていること
イ  相続人が被相続人の有した建設業の業種について、一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと
ウ  申請者が単独相続人であること、または被相続人から申請者への建設業の全部の承継について相続人全員から同意を得ている者であること
エ  被相続人の死亡後30日以内に認可申請を行うこと

※「 相続人が被相続人の有した建設業の業種について、一般・特定の異なる区分の建設業許可を受けていないこと」とは、下記の表をご覧ください。

被相続人相続人 認可の可否
塗装(一般)塗装(一般)
塗装(一般)塗装(特定)×
(どちらかを廃業しなければならない)

3.提出書類、提示書類及び届出書類(大阪府知事認可の場合)

認可申請を行う際の書類は、建設業許可の新規申請の場合とほぼ同じ書類+契約書等が必要になります。
なお、提出の期限は、譲渡などの場合は効力発生日前、相続での認可の場合は死亡後30日以内となっています。

※大阪府知事認可申請の場合での書類です。
※他都道府県知事の認可はその都道府県が出している手引き、大臣認可は管轄の地方整備局、都市整備局の手引きをご覧ください。

 提出書類

大阪府知事へ認可申請をする際に必要な提出書類です。
提出書類の中には、条件が合えば省略できる書類もあります。
また、認可後に常勤性の確認資料の提示や社会保険等についての書類の提出が求められる可能性があります。

○提出書類の綴じ方
大阪府提出用 【閲覧書類】【非閲覧書類】各1部
申請者控え用 【閲覧書類】【非閲覧書類】各1部
合計4部必要です。
※ホッチキスではなく、クリアファイルに挟むかクリップ等をして提出しましょう。
【閲覧書類】とは、誰でも見られる書類のことです。(大阪府知事許可の場合:大阪府庁咲洲庁舎の閲覧コーナーで見ることができます。)
【非閲覧書類】とは、個人情報のため見ることができない書類のことです。

【閲覧書類】

・建設業認可申請書(府独自表紙1)
・下記いずれかの書類
 ①事業譲渡の場合 譲渡及び譲受け認可申請書(省令様式22号の5)
 ②合併の場合   合併認可申請書(省令様式22号の7)
 ➂分割の場合   分割認可申請書(省令様式22号の8)
 ④相続の場合   相続認可申請書(省令様式22号の10)
・役員等の一覧表(省令様式別紙1)
・営業所一覧表(省令様式別紙1(相続)もしくは、省令様式別紙2(事業承継等))
・専任技術者一覧表(省令様式別紙2(相続)もしくは、省令様式別紙3(事業承継等))
・工事経歴書(直近1年分)(省令様式2号)
・直前3年の各事業年度における工事施工金額(省令様式3号)
・使用人数(省令様式4号)
・誓約書(省令様式6号)
・健康保険等の加入状況(省令様式7号の3)
 ※申請時に提出できない場合は、様式7号の3(未確定の箇所は空欄で可)を提出の上、相続以外の場合は様式22号の6、相続の場合は様式22号の11を提出します。
 ※上記提出の後、承継日から2週間以内に健康保険等の加入状況(省令様式7号の3)の提出も必要です。
・建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(省令様式11号)
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・定款
 ※新設の合併、分割法人の場合は後日提出でも可能です。
・財務諸表(法人)(省令様式15号~省令様式17号の3)
・財務諸表(個人)(省令様式18号~省令様式19号)
・営業の沿革(省令様式20号)
 ※新設の合併・分割法人は承継日から30日以内に提出が必要です。
・所属建設業者団体(省令様式20号の2)
 ※新設の合併・分割法人は承継日から30日以内に提出が必要です。
・主要取引金融機関名(省令様式20号の3)

下記の書類は省略できる場合があります。
承継者(もらう側)許可業者かつ、下記の書類の内容に変更がない場合に省略できる様式]
・工事経歴書(直近1年分)(省令様式2号)
・直前3年の各事業年度における工事施工金額(省令様式3号)
・定款
・財務諸表(法人)(省令様式15号~省令様式17号の3)
・財務諸表(個人)(省令様式18号~省令様式19号)
・所属建設業者団体(省令様式20号の2)
・主要取引金融機関名(省令様式20号の3)

[提出後、後日差し替えなければならない可能性のある様式
・役員等の一覧表(省令様式別紙1)
・使用人数(省令様式4号)
・健康保険等の加入状況(省令様式7号の3)
・定款
・営業の沿革(省令様式20号)など

【非閲覧書類】

・建設業認可申請書 (閲覧不可様式集)(府独自表紙2)
・常勤役員等証明書または常勤役員等及び常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(省令様式7号もしくは、省令様式7号の2)
・常勤役員等の略歴書または常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(省令様式7号別紙もしくは、省令様式7号の2別紙)
・健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入に関する確認書類
 ※申請時点で加入している場合は申請時、申請後に加入の場合は承継日後2週間以内に提出が必要です。
・専任技術者証明書(省令様式8号)
・国家資格を有する書面または監理技術者資格者証の写し
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・卒業証明書(発行後3カ月以内)の原本または卒業証書の写し
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・実務経験証明書(省令様式9号)
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・指導監督的実務経験証明書(省令様式10号)
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(省令様式12号)
・建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書(省令様式13号)
 ※該当がある場合に提出が必要です。
・後見登記等に関する登記事項証明書
・市町村の長の発行する証明書(後見・破産)
 ※外国籍の方は住民票が必要です。
・株主(出資者)調書(省令様式14号)
・商業登記簿謄本(支配人登記簿謄本)
 ※法人または個人で支配人を設置する場合のみ提出が必要です。
 ※法人はもらう側とあげる側の両方の履歴事項全部証明書が必要です。
 ※合併・分割の場合は、効力発生日後30日以内に履歴事項全部証明書の提出が必要です。
・事業税納税証明書(府税事務所発行分)
 ※法人設立後、一回目の決算が未到来の場合、大阪府内の各府税事務所に提出した法人設立等申告書が必要です。
 ※個人事業開始後、一回目の決算が未到来の場合、大阪府内の各府税事務所に提出した事業開始申告書が必要です。
 ※新設合併・分割法人の場合、新法人設立後30日以内に提出が必要です。
(・健康保険等の加入状況及びその確認資料の提出に関する誓約書(相続以外の場合は省令様式22号の6、相続の場合は省令様式22号の11))
 ※申請時に7号の3が全て記載できない場合やその確認書類が提出不可の場合のみ提出が必要です。
・承継方法等確認書類及び意志決定確認書類として、下記の①~④のうち、あてはまる番号の全ての書類
 ① 事業譲渡
  ●事業譲渡契約書の写し
  ●株主総会議事録、社員総会決議録、無限責任社員又は総社員の同意書等
 ② 合併
  ●合併契約書の写し及び合併比率説明書
  ●株主総会議事録、社員総会決議録、無限責任社員又は総社員の同意書等
  ●債権者保護手続の実施の確認書類 例)公告(官報等)、個別催告など
 ③ 分割
  ●分割契約書(新設の場合は分割計画書)の写し及び分割比率説明書
  ●株主総会議事録、社員総会決議録、無間責任社員又は総社員の同意書など
  ●債権者保護手続の実施の確認書類 例)公告(官報等)、個別催告など
 ④ 相続
  ●被相続人の死亡日及び申請者と被相続人の続柄を証する書類 例)戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍又は法定相続情報一覧図など
  ●申請者以外に相続人がある場合は、申請者が被相続人の建設業許可を相続して営業を行うことの同意の確認書類 例)同意書(相続人全員分)もしくは遺産分割協議書や遺言書の写し)
  ●同意書や遺産分割協議書に押印のある相続人の印鑑証明書(提示)
・営業所概要書(府規則1号)
 ※新設合併・新設分割法人の場合は、承継法人設立後30日以内に提出が必要です。
・委任状(府規則2号)
 ※本人以外の代理申請の場合のみ必要です。
 ※もらう側、あげる側の両方の委任状が必要(相続の場合は相続人(もらう側)のみ)です。
 ※必ず委任事項が「認可申請」であることを確認しましょう。

[提出後、後日差し替えが必要になる可能性のある様式]
・常勤役員等の略歴書または常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(省令様式7号別紙または省令様式7号の2別紙)
・営業所概要書(府規則1号)など

 提示書類

・もらう側の常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、常勤役員等を補佐する者、専任技術者の常勤かどうかの確認書類(省令様式7号または省令様式7号の2省令様式8号関係)
 ※常勤性の確認書類については、下記の記事をご参照ください。
  ○常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、常勤役員等を補佐する者についてはこちら
  ○専任技術者についてはこちら
 ※もらう側の常勤役員等(経営業務の管理責任者等)または専任技術者が、あげる側の常勤役員等または専任技術者と同一人である場合については、承継日後に常勤かどうかの確認書類の提示が必要です。
 ※もらう側の常勤性の確認書類について、健康保険被保険者証と健康保険被保険者標準報酬決定通知書での確認の場合は、速やかに受付印のある資格取得届を提出しましょう。
 ※健康保険被保険者証と健康保険被保険者標準報酬決定通知書は発行次第、速やかにその写しを提出しましょう。
・常勤役員等の経営経験の確認資料(省令様式7号または省令様式7号の2関係)
 ○常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、常勤役員等を補佐する者の確認資料についてはこちら
・専任技術者の確認資料(省令様式第8号~10号関係)
 ○専任技術者の確認資料についてはこちら
・財産的基礎の確認書類
 ○財産的基礎の確認についてはこちら
 ※新設合併・新設分割法人の場合は、承継法人設立後30日以内に提出しましょう。
 ※特定建設業については、事業承継等(譲渡・合併・分割)の場合、承継日後、もらう側の最初の決算の法人税確定申告書で確認(相続の場合、認可後、相続人の最初の所得税確定申告書で確認)されます。

 届出書類

あげる側、もらう側関係なく、大阪府知事の許可業者が大臣認可を受けた場合、届出を提出する必要があります。
事前連絡をすることで、郵送での受付も可能となっています。

・大臣へ認可申請した旨の届出書(22号の9(事業承継等)または22号の12(相続))
 ※大阪府の許可業者が大臣認可を受けた場合に提出しましょう。
 ※郵送時は正本、副本、返信用封筒(書留郵送分の切手貼付し返信先を記入したもの)を送付しましょう。

〈宛先〉
〒559-8555
大阪市住之江区南港北1-14-16
大阪府咲洲庁舎(さきしまコスモタワー)1階
大阪府建築部建築振興課 建設業許可グループ内委託業者大阪府行政書士会 認可担当

 ※郵送につきましては、必ず一般書留または簡易書留で送付しましょう。
 ※到達後の流れは、連絡での確認→受付→大臣認可申請の状況の確認となります。

まとめ

令和2年10 月1日施行の建設業法改正で新設された認可制度である建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度について解説しました。
認可については、相続の場合30日以内に認可申請をすること、その他の場合効力発生日前に認可を受けることが重要になってきます。
相続の場合、スケジュールがかなり厳しいと思いますので、スムーズに書類を収集していきましょう。