社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは、建設業界において下請けとして働く労働者の社会保険加入を推進するために定められたものです。
このガイドラインは、元請と下請の関係において社会保険の適切な加入を確保し、労働環境を守ることを目的としています。
本記事では、このガイドラインの主な内容について解説します。
1.社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは、下請に対しての社会保険の加入を促すことや、加入していない下請けへの取り扱いなどについて記載されたどちらかというと元請向けのガイドラインになります。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインが作成された趣旨は次のように書いてあります。
本ガイドラインは、建設業における社会保険の加入について、元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にしたものであり、建設企業の取組の指針となるべきものである。
引用:国土交通省社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインp.1より
建設業許可では、社会保険や雇用保険の加入が義務になっています。
しかし、下請の中には建設業許可を持たない業者や、偽装一人親方(実質的には社員と等しい扱いをされている一人親方)などが、適用除外ではないにもかかわらず社会保険に加入していないことが問題視されています。
こうした面もあり、社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインが制定されました。
2.ガイドラインの記載内容の説明
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインに記載されている主な内容は次の点です。
・元請は下請に対して社会保険加入を促す責任がある
・特段の理由※がない限り、社会保険等に入っていない業者は現場に入れないようにすべき
・社会保険等に入っていない業者は下請に選ばないことを徹底すべき
・法定福利費を賄うことができない金額で建設工事の請負契約を締結させない、しないようにすべき
※特段の理由と認められる場合は主に下記の3点です。(国土交通省:社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインp.5より)
・伝統建築の修繕など、当該未加入の作業員が工事の施工に必要な特殊の技能を有しており、入場を認めなければ工事の施工が困難となる場合
・当該作業員について社会保険への加入手続き中であるなど、今後確実に加入することが見込まれる場合
・災害時等の緊急対応時の工事であり円滑な施工に著しい支障が生じる懸念がある場合
近年、建設業界では適用除外ではないのに社会保険に加入していない業者は厳しい目で見られる傾向にあります。
その甲斐あってか建設業界の社会保険等の加入率は他産業の水準とほぼ同レベルの加入率となっています。
全産業の社会保険加入率
建設業許可業者の社会保険加入率
上記の円グラフは令和元年の国土交通省の社会保険の加入状況を示しています。
他の産業と比較しても遜色がないぐらい加入率が高くなっています。
建設業界の若手不足や過酷な労働環境の改善につながっていくかもしれません。
まとめ
本記事では、建設業界における社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインについて解説しました。
このガイドラインは、元請が下請に対して社会保険の適切な加入を促すため、適用除外でない業者のうち社会保険に加入していない建設業者を減らすための重要なガイドラインです。
若手不足が深刻な建設業界では、福利厚生を整えるというのが早急な課題になっています。
建設業界の発展と労働者の福利厚生のために、ガイドラインの遵守が重要です。